「……私、最近思うポヨ。きっとアシュ様を中心に世界は回っているポヨ」
「ふふふ、もっと褒めなさい!」
ニジの言葉に高笑いするアシュレイ。
彼女が受けたのは定期的な健康診断……などではなく、地獄における序列に影響する魔力診断。
この診断結果により、地獄政府から優遇されたり冷遇されたりする。
そういう重要なイベントであるので、当然政府から派遣された者がやるのが筋であるのだが、如何せん契約魔法という便利なものがある。
嘘偽りなく記録を記入する、という契約を交わすことで自分達で診断するのだ。
「通常状態で152億マイト……どう見ても魔王クラスポヨ。私の主は出世街道一直線ポヨ。私の給料とかも安全ポヨヨ」
マイト、というのは魔族の魔力や神々や天使などが持つ神霊力の高さを示す単位だ。
一番弱い、人間でも倒せる下っ端魔族がおよそ200マイト程度であるから魔王クラスのデタラメさがよく分かる。
より分かりやすい比較対象を出すとするならば、中級魔族であるヘルマンが全力戦闘状態で2万弱。
比喩ではなく、ヘルマンをデコピン一発でこの世から消し飛ばすことができるアシュレイであった。
「もっと褒めて! もっと讃えなさい!」
アシュレイの高笑いが響く中、彼女の付き添いとしてここに来ていたディアナは思わず呟いた。
「でも、アシュ様って一回も実戦に出たことないんじゃ……」
一瞬で天使が通り過ぎたかのような沈黙。
地獄なのに天使が通り過ぎるという矛盾はさておいて、アシュレイ以外は誰もが知りながら気づかない振りをしていたことを……禁句を言ってしまった。
ディアナの隣にいたエシュタルは彼女を小突くことで気づかせる。
エシュタルもまた付き添いできていたのだが……災難であった。
ハッとしたディアナは主へと恐る恐る視線を向けた。
「誰がゼウスを倒したのか、言ってみろ!」
にこやかな笑顔だが、目が全く笑っていないアシュレイ。
膨大な魔力がその小柄な体から立ち上り、ディアナを含め全員が体を震わせる。
「あ、アシュ様です! ギリシャ系神族の士気はもはや最底辺となっております!」
ディアナはそう叫んだ。
ギリシャ系神族達は主神を倒されたことから怒り心頭、弔い合戦だ……というノリではない。
アシュレイがゼウスと1対1でのガチバトルで勝利したのなら、そういう機運になっただろうが、如何せん、彼女のハニートラップでやられてしまったのだ。
これで士気が上がるわけがない。
アシュレイはディアナの答えに満足そうに頷く。
とはいえ、彼女としては自分の力を存分に振るいたかった。
早い話が、魔族としての破壊欲全開でブッ殺したいのである。
「……そろそろ私も名前を売りに行こうかしらね。とりあえず、熾天使辺りを全員ぶっ飛ばせばいいかしら……」
熾天使の誰かを堕天させてしまおうかしら、ととんでもないことを彼女は考える。
もし実現すれば彼女の名は神界・魔界に響き渡る。
今でも十分に響きわたっているが、アシュレイはより多くのものを得ることだろう。
魔界では輝かしい栄光を、神界には恐怖を。
そして、彼女は知っている。
天使はその格が高ければ高い程に堕天し易いということを。
「今、有名な熾天使は誰?」
アシュレイの問いにエシュタルが答える。
「メタトロン、ルシフェルでしょうか。あとはミカエル、ガブリエル……」
「堕天は難しそーね……」
うーん、どうしようか、とアシュレイは悩む。
「バアルゼブルというのはどうでしょうか? わりとマイナーな熾天使ですが」
エシュタルの言葉にアシュレイは手を叩く。
彼はサッちゃんと共に将来的に堕天する予定であるが、少しくらい早まっても別に問題はない。
結果さえ同じであるならば世界は容認する。
「どっちにしろ、戦場に出ないといけないわね。あ、ついでに女神とか女っぽい天使とか捕らえよう! でもって調教しよう!」
「……ミカエルやガブリエルは女と聞きましたが」
少し不満そうな顔でエシュタルはそう告げる。
彼女としてはアシュレイの妾が増えるのはあまり喜ばしいことではない。
自分に構ってくれる時間が減ってしまうからだ。
しかし、アシュレイはそんな彼女の気持ちを見透かしたのか、念話でエシュタルに語りかけた。
『安心して。あなたが完全に足腰立たなくなった後に調教するから』
エシュタルは思わず顔を赤くし、俯かせる。
そんな彼女にアシュレイはうんうん、と頷く。
「ともあれ、ミカエルとガブリエルを最優先に……ああ、あとワルキューレとかもいる筈……ぐへへ……」
その光景を妄想し、気色悪く笑うアシュレイだが、彼女の暴走を止める者は……というよりか、止められる者はこの場にはいない。
唯一、止められるのはアシュタロスくらいだが、その彼は城の建築を楽しくやっている。
「昂ぶってきたわー、早く天使を捕まえたいわー」
おもむろにニジに抱きつき、その膨らみはじめている胸を揉みしだく。
ニジの喘ぐような声にアシュレイは辛抱堪らん、とこの場で美味しく頂くことにした。
ディアナとエシュタルもまぜてやれば彼女的には全く問題がない。
ともあれ、神魔族間には捕虜の取り決めなんぞ存在しない。
将来的にはそういった条約みたいなものができるかもしれないが、今は文字通りの殲滅戦争だ。
故に、アシュレイが天使や女神を捕まえて、どんな風に扱おうとも全くもって問題なかった。
その頃、地球の某所では――
粗末な山小屋で一人の女性が小さな木彫りの人形に一心に祈りを捧げていた。
それだけならば特におかしなところはない。
ただ、その人形が愛らしい少女の姿で頭にヤギの角、背中に翼が無ければ。
「アシュ様……」
彼女の口からそんな名前が漏れ出た。
やがて彼女はゆっくりと閉じていた瞼を開いた。
灰色の髪、灰色の瞳。
数百年以上前、アシュレイが魔法を教えていたエナベラの面影がどことなく残っている顔つき。
「私を、私の一族をお護りください」
そう告げ、彼女は自らの下腹部を撫でた。
もはや言うまでもないが、彼女はエナベラの子孫であった。
「ああ、アシュ様……」
彼女はうっとりとした顔で両目を閉じ、エナベラからずっと受け継がれている魔法の一つを使う。
アシュレイがエナベラに便利だから、と教えた魔法だ。
それは記憶再生魔法。
エナベラから彼女に至るまでの記憶を再生できるのだ。
彼女の脳内に展開されるアシュレイとの日々。
それはエナベラの視点であり、同時にそれは記憶を再生している彼女の視点ともなる。
彼女はアシュレイとの楽しい日々を擬似的に体験する。
それは勿論、夜のことまで。
やがて場面は変わり、楽しい日々から辛く、苦しい日々へと変わる。
途中で再生をやめることもできるが、そうしないのは一種の儀式でもあるからだ。
エナベラは悪魔を信仰する者というレッテルを貼られ、避けられ、時には石を投げられ……終いにはトチ狂った輩に悪魔を浄化する為とレイプまでされてしまう。
だが、それでもエナベラは自らの手で命を絶たなかった。
アシュレイはこれらのことを予言していたからだ。
エナベラは信じていた。
アシュレイの言葉通りに耐えれば希望が見えてくる、と。
彼女は人里を離れ、山奥に隠れ住んだ。
そして、彼女は1人の子供を産む。
彼女が山奥に住み始めてから4年後のことだ。
そう、彼女はある日突然懐胎した。
彼女はそれをアシュレイの子である、と確信し愛情をもって育て上げた。
すると、その子供は母親であるエナベラと似ていた。
再び場面が変わる。
次はエナベラの娘の視点だ。
特に何事もない平穏な日々が続き、彼女もまたエナベラと同じように突然懐胎し、子供を生んだ。
すっかり老けたエナベラが孫の誕生を喜んでいる姿が見える。
そして、再び場面が変わっていく。
同じように、同じように、ある日突然懐胎し、決まって娘を産んでいく。
やがて魔法が終わり、視界が元に戻る。
「アシュ様……」
一目でいいから、記憶でなく実際にお会いしたい、と彼女は心の内で呟く。
「私は、私達は諦めません」
彼女はそう口に出した。
エナベラから続く一連の現象は一種の呪いともいえる。
アシュレイは魔神であり、エナベラは人間であった。
そんな2人が交わって、人間であるエナベラが何もない方がおかしいのだ。
傍目から見ればエナベラから続く、彼女の血筋は悲惨であった。
永遠にアシュレイに縛られ続けるのだから。
だが、彼女達はそうは思っていなかった。
彼女達は数百年以上前の、アシュレイがソドムとゴモラにしたことを知っている。
彼女達にとってアシュレイは忌むべき悪魔などではなく、祀るべき神であった。
ただ、当のアシュレイはソドムとゴモラに生き残りはいない、と断定していた。
これは一種の先入観によるもので、自分とアシュタロスの結界を抜いてくるような神族が生き残りを見過ごす筈がない、というものだ。
ある意味、自惚れといえるが、それでもエナベラからずっと祈り続けているのだから、いつ、その祈りが通じてもおかしくはない。
「どうか、この生活がアシュ様にお会いできるまで続きますように……」
贅沢は言わない。
ただ、ひっそりとそのときまで平穏に暮らしていたい。
それが彼女の切実な願い。
だが、それは儚い願いであった。
彼女はこの数年後、山狩りに遭い、6歳になったばかりの娘は逃す為に自身を囮とし、神を信仰する人間達に捕まり、凄惨極まる拷問の後に殺された。
「ふふふ、もっと褒めなさい!」
ニジの言葉に高笑いするアシュレイ。
彼女が受けたのは定期的な健康診断……などではなく、地獄における序列に影響する魔力診断。
この診断結果により、地獄政府から優遇されたり冷遇されたりする。
そういう重要なイベントであるので、当然政府から派遣された者がやるのが筋であるのだが、如何せん契約魔法という便利なものがある。
嘘偽りなく記録を記入する、という契約を交わすことで自分達で診断するのだ。
「通常状態で152億マイト……どう見ても魔王クラスポヨ。私の主は出世街道一直線ポヨ。私の給料とかも安全ポヨヨ」
マイト、というのは魔族の魔力や神々や天使などが持つ神霊力の高さを示す単位だ。
一番弱い、人間でも倒せる下っ端魔族がおよそ200マイト程度であるから魔王クラスのデタラメさがよく分かる。
より分かりやすい比較対象を出すとするならば、中級魔族であるヘルマンが全力戦闘状態で2万弱。
比喩ではなく、ヘルマンをデコピン一発でこの世から消し飛ばすことができるアシュレイであった。
「もっと褒めて! もっと讃えなさい!」
アシュレイの高笑いが響く中、彼女の付き添いとしてここに来ていたディアナは思わず呟いた。
「でも、アシュ様って一回も実戦に出たことないんじゃ……」
一瞬で天使が通り過ぎたかのような沈黙。
地獄なのに天使が通り過ぎるという矛盾はさておいて、アシュレイ以外は誰もが知りながら気づかない振りをしていたことを……禁句を言ってしまった。
ディアナの隣にいたエシュタルは彼女を小突くことで気づかせる。
エシュタルもまた付き添いできていたのだが……災難であった。
ハッとしたディアナは主へと恐る恐る視線を向けた。
「誰がゼウスを倒したのか、言ってみろ!」
にこやかな笑顔だが、目が全く笑っていないアシュレイ。
膨大な魔力がその小柄な体から立ち上り、ディアナを含め全員が体を震わせる。
「あ、アシュ様です! ギリシャ系神族の士気はもはや最底辺となっております!」
ディアナはそう叫んだ。
ギリシャ系神族達は主神を倒されたことから怒り心頭、弔い合戦だ……というノリではない。
アシュレイがゼウスと1対1でのガチバトルで勝利したのなら、そういう機運になっただろうが、如何せん、彼女のハニートラップでやられてしまったのだ。
これで士気が上がるわけがない。
アシュレイはディアナの答えに満足そうに頷く。
とはいえ、彼女としては自分の力を存分に振るいたかった。
早い話が、魔族としての破壊欲全開でブッ殺したいのである。
「……そろそろ私も名前を売りに行こうかしらね。とりあえず、熾天使辺りを全員ぶっ飛ばせばいいかしら……」
熾天使の誰かを堕天させてしまおうかしら、ととんでもないことを彼女は考える。
もし実現すれば彼女の名は神界・魔界に響き渡る。
今でも十分に響きわたっているが、アシュレイはより多くのものを得ることだろう。
魔界では輝かしい栄光を、神界には恐怖を。
そして、彼女は知っている。
天使はその格が高ければ高い程に堕天し易いということを。
「今、有名な熾天使は誰?」
アシュレイの問いにエシュタルが答える。
「メタトロン、ルシフェルでしょうか。あとはミカエル、ガブリエル……」
「堕天は難しそーね……」
うーん、どうしようか、とアシュレイは悩む。
「バアルゼブルというのはどうでしょうか? わりとマイナーな熾天使ですが」
エシュタルの言葉にアシュレイは手を叩く。
彼はサッちゃんと共に将来的に堕天する予定であるが、少しくらい早まっても別に問題はない。
結果さえ同じであるならば世界は容認する。
「どっちにしろ、戦場に出ないといけないわね。あ、ついでに女神とか女っぽい天使とか捕らえよう! でもって調教しよう!」
「……ミカエルやガブリエルは女と聞きましたが」
少し不満そうな顔でエシュタルはそう告げる。
彼女としてはアシュレイの妾が増えるのはあまり喜ばしいことではない。
自分に構ってくれる時間が減ってしまうからだ。
しかし、アシュレイはそんな彼女の気持ちを見透かしたのか、念話でエシュタルに語りかけた。
『安心して。あなたが完全に足腰立たなくなった後に調教するから』
エシュタルは思わず顔を赤くし、俯かせる。
そんな彼女にアシュレイはうんうん、と頷く。
「ともあれ、ミカエルとガブリエルを最優先に……ああ、あとワルキューレとかもいる筈……ぐへへ……」
その光景を妄想し、気色悪く笑うアシュレイだが、彼女の暴走を止める者は……というよりか、止められる者はこの場にはいない。
唯一、止められるのはアシュタロスくらいだが、その彼は城の建築を楽しくやっている。
「昂ぶってきたわー、早く天使を捕まえたいわー」
おもむろにニジに抱きつき、その膨らみはじめている胸を揉みしだく。
ニジの喘ぐような声にアシュレイは辛抱堪らん、とこの場で美味しく頂くことにした。
ディアナとエシュタルもまぜてやれば彼女的には全く問題がない。
ともあれ、神魔族間には捕虜の取り決めなんぞ存在しない。
将来的にはそういった条約みたいなものができるかもしれないが、今は文字通りの殲滅戦争だ。
故に、アシュレイが天使や女神を捕まえて、どんな風に扱おうとも全くもって問題なかった。
その頃、地球の某所では――
粗末な山小屋で一人の女性が小さな木彫りの人形に一心に祈りを捧げていた。
それだけならば特におかしなところはない。
ただ、その人形が愛らしい少女の姿で頭にヤギの角、背中に翼が無ければ。
「アシュ様……」
彼女の口からそんな名前が漏れ出た。
やがて彼女はゆっくりと閉じていた瞼を開いた。
灰色の髪、灰色の瞳。
数百年以上前、アシュレイが魔法を教えていたエナベラの面影がどことなく残っている顔つき。
「私を、私の一族をお護りください」
そう告げ、彼女は自らの下腹部を撫でた。
もはや言うまでもないが、彼女はエナベラの子孫であった。
「ああ、アシュ様……」
彼女はうっとりとした顔で両目を閉じ、エナベラからずっと受け継がれている魔法の一つを使う。
アシュレイがエナベラに便利だから、と教えた魔法だ。
それは記憶再生魔法。
エナベラから彼女に至るまでの記憶を再生できるのだ。
彼女の脳内に展開されるアシュレイとの日々。
それはエナベラの視点であり、同時にそれは記憶を再生している彼女の視点ともなる。
彼女はアシュレイとの楽しい日々を擬似的に体験する。
それは勿論、夜のことまで。
やがて場面は変わり、楽しい日々から辛く、苦しい日々へと変わる。
途中で再生をやめることもできるが、そうしないのは一種の儀式でもあるからだ。
エナベラは悪魔を信仰する者というレッテルを貼られ、避けられ、時には石を投げられ……終いにはトチ狂った輩に悪魔を浄化する為とレイプまでされてしまう。
だが、それでもエナベラは自らの手で命を絶たなかった。
アシュレイはこれらのことを予言していたからだ。
エナベラは信じていた。
アシュレイの言葉通りに耐えれば希望が見えてくる、と。
彼女は人里を離れ、山奥に隠れ住んだ。
そして、彼女は1人の子供を産む。
彼女が山奥に住み始めてから4年後のことだ。
そう、彼女はある日突然懐胎した。
彼女はそれをアシュレイの子である、と確信し愛情をもって育て上げた。
すると、その子供は母親であるエナベラと似ていた。
再び場面が変わる。
次はエナベラの娘の視点だ。
特に何事もない平穏な日々が続き、彼女もまたエナベラと同じように突然懐胎し、子供を生んだ。
すっかり老けたエナベラが孫の誕生を喜んでいる姿が見える。
そして、再び場面が変わっていく。
同じように、同じように、ある日突然懐胎し、決まって娘を産んでいく。
やがて魔法が終わり、視界が元に戻る。
「アシュ様……」
一目でいいから、記憶でなく実際にお会いしたい、と彼女は心の内で呟く。
「私は、私達は諦めません」
彼女はそう口に出した。
エナベラから続く一連の現象は一種の呪いともいえる。
アシュレイは魔神であり、エナベラは人間であった。
そんな2人が交わって、人間であるエナベラが何もない方がおかしいのだ。
傍目から見ればエナベラから続く、彼女の血筋は悲惨であった。
永遠にアシュレイに縛られ続けるのだから。
だが、彼女達はそうは思っていなかった。
彼女達は数百年以上前の、アシュレイがソドムとゴモラにしたことを知っている。
彼女達にとってアシュレイは忌むべき悪魔などではなく、祀るべき神であった。
ただ、当のアシュレイはソドムとゴモラに生き残りはいない、と断定していた。
これは一種の先入観によるもので、自分とアシュタロスの結界を抜いてくるような神族が生き残りを見過ごす筈がない、というものだ。
ある意味、自惚れといえるが、それでもエナベラからずっと祈り続けているのだから、いつ、その祈りが通じてもおかしくはない。
「どうか、この生活がアシュ様にお会いできるまで続きますように……」
贅沢は言わない。
ただ、ひっそりとそのときまで平穏に暮らしていたい。
それが彼女の切実な願い。
だが、それは儚い願いであった。
彼女はこの数年後、山狩りに遭い、6歳になったばかりの娘は逃す為に自身を囮とし、神を信仰する人間達に捕まり、凄惨極まる拷問の後に殺された。