不完全な実戦

「拙いわね」

 賈詡は1人、司令部とされた特別仕立ての大型馬車に揺られながら頭を悩ませていた。
 本来なら陳宮もここに詰めているのだが、今は高順に賈詡が頭を悩ませていることを報告しに行っている為にいない。


 既に孫堅の本陣を出立して3週間が経過している。
 
 孫堅からもらった敵の情報と劉璋の件に関する謝礼として資金及び物資をそれなりにもらい、敵の兵力の薄いところを突くべく、海沿いの涿郡を目指している。
 涿郡はこれまでに何度か連合軍が攻め寄せたが、その度に他地域の烏丸が迅速に援軍に
駆けつけ、結局落とせなかったという経緯がある。
 敢えて兵力を薄くし、敵を誘い込んだところで集中攻撃を掛け、消耗させるという戦法であり、高順がやった機動防御をより大規模にした形だ。


 連合軍が取り戻した領土は1週間前に通りすぎ、ここは右も左も敵地だ。

 いつ敵が現れてもおかしくはないが、幸いにも周囲は平原であり、遮蔽物となるようなものはない。
 敵の奇襲を受けるということはないだろう。

「幽州は整備されていない道が多いとは知っていたけど、ここまで多いとは……」

 高順の軍勢の陣容は4000台を超える馬車だ。
 5200余名の高順の兵及び文官と孫策らや厳顔ら援軍が乗るのはそのうちの1000台程度。
 残る全ては糧食、飼葉、水、被服、予備の武具、壊れた武具の補修器具、薪、毛布、矢、馬車の補修部品などだ。
 空前絶後の規模の馬車の群れを周瑜ならずとも見たことがないだろう。
 それらの馬車は全て袁家の金で作り、賈詡が取り返したものだ。
 4000頭以上の馬は幸いにも、騎兵が使うような駿馬である必要はないので安いとはいえ、ここまでくるととんでもない金額になる。

 それはさておき、賈詡が頭を悩ませている事柄は2つあり、1つはその馬車であった。
 頑丈に作り、幾度か試験も行ったのだが、未整備の道を長距離走破するのは難しかったらしく、既に100台近い馬車の車軸が壊れている。
 4000のうちの100と考えるとそこまで多くはないように思えるが、その積んでいる物資の量は決して少なくはない。

 勿論、修理するための器材は持ってきており、100台のうち、半分はどうにか直せたが、さすがにここまで多いと馬車とした意味が無くなってしまう。
 すなわち、行軍速度の高速化という点だ。

「おまけに想定した消費量よりも実際の消費量は多い」

 水、糧食そして飼葉の消費量であった。
 予想消費量よりも実に2倍近い速さでそれらの3つは消費されている。
 幸いにも劉璋及び孫堅から頂いた為、物資は豊富とはいえ見過ごせる問題ではない。

「……理論と実践では全然違うわね」

 賈詡はそう呟きつつ、緊急報告としてそれら2点について詳細に纏め始める。
 馬車については高順らも把握しているとはいえ、消費量についてはさすがにわからなかった。

 そして、悲鳴にも似た叫びが響いたのはまさにそのときであった。


「敵斥候! 右に10!」


 賈詡は素早く陣形を頭に思い描く。
 現在の陣形は賈詡のいる司令部を中心に周囲を兵士を満載した馬車が取り囲む形となっている。
 物資や文官を載せた馬車は賈詡の馬車の後方に二列縦陣を取っており、その馬車列の側面にも兵を載せた馬車が左右に数両ずつ配置されている。
 上から見れば巨大な楔形に見えることだろう。

 そして、30の騎兵は馬車の陣の更に外側にぽつぽつと点在している。
 彼らは敵発見の報を受け、敵斥候を追っかけているだろう。


 にわかに馬車の速度が落ちていることを賈詡は感じ取った。
 これも当初の予定通りだ。

 やがて馬車が完全に停止するや否や、周囲から次々と降車と叫ぶ声が聞こえてくる。
 兵を載せた馬車からは次々に兵達が飛び出し、馬車の側面に取り付けてあった大盾を外しに掛かった。

 大盾を馬車の中に入れるよりも、どうせなら側面に取り付けた方が奇襲を受けても安全だという考えだ。

 賈詡も急いで馬車から降り、高順がいる先頭へと駈け足。
 とはいえ、司令部の馬車とは離れておらず、すぐに賈詡は高順の下にたどり着いた。
 そこには既に主要な面々が揃っている。
 すなわち、軍の総責任者である張遼、軍師の陳宮、そして孫家からの援軍代表の周瑜だ。
 ここにはいない華雄達は勿論、厳顔や黄忠は実質的に高順配下であるので、彼女らには後で決定事項が伝令で伝えられることになっている。


「敵の予想兵力は?」

 高順は賈詡の顔を見るなりすぐに問いかけた。

「少数の筈よ。向こうはこちらを輜重隊としか思えない筈。部隊全部を馬車に乗せてしまえ……ということはマトモな頭じゃ考えつかないわ」

 賈詡の刺々しい言い方に高順は苦笑するしかない。
 
「張遼、斥候を追っかけた騎兵は予定通り送り狼しているのです?」
「してるでぇ。斥候連中がウチの騎兵を撒こうとして遠回りすればする程、情報伝達も遅れるやろ……予定通りにな」

 陳宮はその答えに満足気に頷く。
 早い話が敵斥候の後をつけて本隊がどこにいるか見つけてしまおう、というのが送り狼だ。
 無線がないこの時代、斥候で得た情報は口頭で伝えざるを得ない。
 まさか馬上で手旗信号をするわけにもいかないからだ。

 張遼が言った通り撒こうとすればする程、情報伝達が遅くなるのは間違いない。

「せやけど、本隊が見つかったところでこっちの戦力じゃどうにもならんやろ? 歩兵じゃ捉えられんし、頼みの騎兵はたった30……ウチら武官を入れても数としては大差ないで?」

 張遼の最もな問いに陳宮は笑みを浮かべる。

「問題ないのです。こちらを囮にし、騎兵と武官全員で敵の後方から食いつけばそれで終わるのです」

 陳宮の言葉に続くように賈詡が告げる。

「幸いにも黄忠は勿論、厳顔もあの杭打ち機を使う前は弓を使っていたみたいよ。こちらに取り付く前に弓を射かけて少しでも遅らせればいい」

 そのように次々とやるべきことが決まっていく光景に周瑜は舌を巻いていた。
 彼女自身も軍議の場には何度も出たことがあるが、武官連中が手柄を得ようと先陣争いをしたり、軍師連中は自分の考えた策を長々と披露し、自分の策こそ最上といった感じで強烈に押してくるので中々決まらない。
 それと比べれば驚くべき速さであった。

「孫家はどちらに?」

 周瑜は高順の問いで我に返り、すぐさま答える。

「我々の方からも将を出します。あなた方に苦労させるだけでは何の為の援軍か分からない」
「馬の扱いはご存知?」

 高順の挑発的な問いかけに周瑜は笑みを浮かべる。

「伯符殿も仲謀殿も興覇殿も戦闘の技能は一級です。さすがにあなた方には及びませんが、十分実戦に耐えるだけの馬術を持っております」

 なるほど、と頷きつつ、高順が告げる。

「私が烏丸と内通しているとか良からぬ疑いを掛けられる前にハッキリと示しておく必要がある……ということで解散」

 
 解散の合図に各々が控えていた伝令達に命を伝えつつ、準備に取り掛かるべく、その場を後にする。
 周囲が喧騒に包まれる中、残った賈詡は高順に問いかけた。

「あんたも出るの?」
「ああ言った以上、出ないわけにはいかない。出たくないけど」

 ポツリと零れた本音は喧騒に掻き消える。
 賈詡は溜息を吐き、高順の形の良い尻を思いっきり叩いた。

 ひゃん、と飛び上がる高順に賈詡は何も言わせないように、言葉を紡ぐ。

「シャキッとしなさい。あんたが言った通りに孫家の連中の前で見せとかないといけないわ」

 賈詡はそこで一度言葉を切り、高順の目をまっすぐに見据え、告げる。

「大丈夫。あんたは天下取って寿命で死ぬことになってるんだから。ボクが保障する」

 その励ましに高順は知らず知らず笑みが溢れる。
 その様に賈詡も微笑む。
 滅多に見られない賈詡の微笑みは滅多に見られないからこそ、とても綺麗。

「総大将が前線に出るなんて基本的に負け戦なんだけど……」
「時と場合によるわよ。さ、準備しなさい」

 傍目から見れば2人の様子は主従というよりも、親子であった。
 勿論、賈詡が親であることは言うまでもなかった。








 軍議から半刻程が経過したとき、送り狼としてついていった騎兵数名が戻ってきた。
 そして、彼らのもたらした情報に賈詡は直ちに先ほどの面々を集めた。

「予想外の事態よ。敵は3000以上の歩兵を伴い、その後方に突騎が500程いるらしいわ」

 開口一番、賈詡が告げた事態の重さに一同は言葉を失うも、すぐに高順が問いかける。

「事前の情報では烏丸には通常の騎兵はいるものの、歩兵は確認されていなかった筈では?」

 問われた周瑜は毅然として答える。

「我が真名に誓って文台様は偽の情報を教えてはいません。おそらくですが、現地住民を強制的に徴兵したのでは?」
「その可能性が高いわね。脅されたか、それとも食糧と引き換えか」

 その会話に陳宮が待ったを掛ける。

「しかし、現地住民も略奪をしている烏丸に素直に従うとは思えないのです。また抵抗運動も起きていると聞くのです」

 そのように議論がなされる中、高順は突騎の存在に着目した。
 わざわざ突騎を後ろに配置する意味……それを考えればとても簡単に答えが出た。
 だが、それは賈詡や周瑜、陳宮も気づいているだろうが、まさかと思い否定しているだろうことだ。

「突騎の存在は歩兵を後ろから撃つ為ね」

 高順は断定した。

「んなアホな。幾ら烏丸でもそんなことはせんやろ?」
「それじゃ、張遼はどうして突騎を前に出さないのか、分かる?」

 高順の問いに張遼は口を噤んでしまう。
 彼女としても、それは疑問に思えたことだ。

「脅して歩兵を前に出して、逃げたら撃つ。死んでも代わりはいる……そういうことよ」
「おそらくはそうでしょうね」

 高順の言葉を賈詡は肯定する。
 張遼は苦虫を噛み潰したような顔だ。
 彼女とて兵士には色々な事情があることは知っている。
 名を上げたい者、金の為に入る者、農業が嫌だから入る者などなど。

 張遼はそういった者達は別に何とも思わない。
 理由はどうあれ、志願してくるのだから。

 だが、このように無理矢理住民を戦闘に駆り出すのは許せなかった。

「士気も練度も最低……おそらく武器もまちまちでしょう。歩兵は無視しても構わないかと」

 周瑜の言葉に賈詡は頷きつつ、言葉を紡ぐ。

「私達は住民を烏丸の暴虐から解放するという建前があるわ。だから、その建前通りに揺さぶりを掛ける」

 そう言いつつ、文句はないわね、と周瑜に視線を向ける。
 勢力の増大を防ぐよう、彼女は孫堅から命を受けているかもしれないのだ。
 下手な行動は命取りになる。

 対する周瑜はただ頷くのみ。
 彼女とて賈詡が何をするのかはすぐにわかった。

「ともかく、当初の予定通りにやれば問題ないのです」

 陳宮の言葉に一同は頷いたのだった。










「腕が鳴るわね」

 うきうきしている孫策に孫権は盛大に溜息を吐く。
 姉の戦好きはいつものこととはいえ、今は援軍としてお邪魔している身。
 戦闘後の昂った気分で誰かを襲ったりしたら目も当てられない。

 そんなことがあったら、賈詡が嬉々としてこちらから賠償金なり何なりをむしり取っていくだろうことは容易に予想がつく。

 それは周瑜の言による。
 彼女は賈詡を高順一派の中で最も危険と孫策らに告げていた。

「姉様、自重しろとは言いませんが、戦闘後は何とか抑えてください」
「分かってるわよ。にしても、高順や華雄の白い肌って神秘的でいいわねー」

 うふふ、と怪しい笑みを浮かべる孫策に孫権は再び溜息を吐いた。
 そんな2人の後ろには甘寧が付き従っている。
 今、3人は高順らと共に本隊から離れ、敵が通過するだろう進路の側面にいた。
 

 敵本隊が囮であるこちらの本隊に近づいたら、銅鑼を盛大に鳴らすことで高順ら奇襲隊に知らせることとなっている。
 無論、それだけではなく、張遼と華雄が敵本隊の詳細な位置を知るべく、偵察に出ている。
 彼女らは敵本隊にぎりぎりまで張り付き、囮から敵が見える位置までやってきたら奇襲隊と合流する予定だ。

「しかし……さすがね」

 孫策はおちゃらけた雰囲気から一転、目付き鋭く高順らへ僅かに視線を向け、すぐに孫権と甘寧に戻した。

「騎馬戦は向こうが一歩も二歩も上だわ。おまけに……」

 孫策は初めて高順の騎兵を見たときのことを思い出す。
 あのとき、高順も華雄もその表情でこう言っていた。

 突騎は烏丸の専売ではない――

「30騎とはいえ全員突騎。それも腕は抜群。彼らに加えて、高順達が加わるんだから、もうなんというか……」

 ここまでやってくるのに孫策らは高順らの腕前を見ている。
 高順や華雄も凄いが、何と言っても度肝を抜かれたのが董卓と呂布だ。
 放たれたその矢は大木の太い幹を貫通してしまう程。
 あんなものを人間が食らったら一瞬で挽肉になることは間違いない。

 また、怖いもの見たさで孫策は数回彼女らと打ち合ってみたが、10合もてばいい方だった。
 戦闘で自分を上回る存在というのは孫策とて知っている。
 だが、ここまで圧倒的な存在は初めてであり、驚くしかなかった。

 この2人に加え、馬騰や呂布に僅かに劣る程度という馬超や関羽までもがいるのだから堪らない。

「戦いたくはない相手です」

 控え目に甘寧が告げた。
 その言葉に孫策と孫権は驚く。
 あの甘寧がそういう発言をするとは思ってもみなかったことだ。

 そのことに甘寧も気づいているらしく、さらに言葉を紡いだ。

「先の官軍との戦では高順の下に軍師はいなかったと聞きます」

 甘寧の言葉で2人はすぐに理解した。
 軍師抜きで10倍の相手に勝ってしまう程の戦上手。
 ならば、軍師が……それも周瑜が危険と見做した賈詡がいる高順相手に戦うのはどれだけの兵力が必要になるのか。

「今回みたいに連合を組まないと相手にもならない……そういうことね」

 孫策は溜息混じりにそう告げた。
 






 一方その頃、高順らは馬の上でのんびりとしていた。
 今更戦闘で緊張するようなものでもない。
 ただ、彼女ら将を除けば高順の兵は全て今回が初の実戦である。
 しかし、彼らはのんびりくつろいでいる上司達を見て、不安が幾分か和らいでいるようだ。

 張遼と華雄が偵察に出て早1刻。
 そろそろ戻ってきてもいい頃合い――そう高順が思ったとき、2つの影が遠くに現れた。
 それはケシ粒程の大きさであったが、どんどん大きくなり……やがてその人影が華雄と張遼であることが確認できた。

「敵はここからすぐのところまで迫ってきている。歩兵は概算で3000以上4000未満、突騎は500前後。歩兵は横陣だが、装備はまちまち。歩兵に弓を持っている者はいない。歩兵の士気は事前の予想通りに低い。以上」

 華雄が手早く告げる。

「報告ご苦労。あとは合図まで休んで頂戴」

 高順はそう告げ、あくびを噛み殺した。

「暇だね」

 そんな彼女に董卓が話しかけてきた。
 背は高順と同じ程度まで伸び、その胸も昔からは想像もつかない程に大きくなっている。
 髪も伸ばし、後ろで一つに纏めている。
 勿論、高順が贈ったあの紅玉は今も額にある。

「彩ちゃん、この後は?」
「涿郡に入って村か街に橋頭堡を築いて、援軍待ちよ」

 高順の答えに董卓はむーっと頬を膨らませる。
 どうやらそういう意味ではなかったらしい。
 高順は考え……

「行軍中は全部駄目。添い寝も不可」
「えー……」

 不満気な顔の董卓。
 言うまでもないことだが、高順は董卓の正妻になりたいということを賈詡に言われた通りに断っている。
 その上で手を出しているのだから、何ともはや。

「やってる最中に矢が飛んできてそのまま戦死なんてアホな死に方はしたくないの」
「ちょっとだけなら……」

 高順の説明に食い下がる董卓。
 かつての奥手な彼女はどこへやら。
 今では物凄く積極的なのである。

「駄目。軍律違反。率先して上が乱すのはいかがなものか」
「1人寝は嫌だな……」

 寂しそうな顔の董卓。

「1人遊びも色々な意味で楽しいわよ?」
「私は彩ちゃんとがいいな」
「……お前達、こんな昼間から何て会話してるんだ」

 そう声を掛けてきたのは馬超。
 彼女は色々と想像してしまったらしく、顔が真っ赤だ。
 かつての彼女なら聞いただけでぶっ倒れてしまうのだが、これまでの馬騰によるそっちの意味での教育の賜物か、今では顔を真っ赤にして色々想像する程度に成長している。
 無論、この教育は馬超だけではなく馬岱にも行われていおり、姉貴分とは正反対に彼女は興味津々であった。

「翠ちゃんは寂しくないの?」

 問いに馬超は奇声を発するが、倒れずにこらえる。

「私は寂しくない! 相手もいないし!」
「でも、この前、燦さんが馬一族は全員高順の子供が欲しいとか何とか」

 聞くなり、馬超は馬騰へ顔を向けた。
 向けられた方はうんうんと頷いている。

 既に高順一派の中では高順が両性具有であることは公然の秘密だ。
 その反応は女性には歓迎され、男性には珍しい、という程度であったりする。
 とはいえ、さすがに日が浅い厳顔や黄忠、孫策らにはまだ知られてはいない。

「母様……勝手に決めないでくれ……」

 はぁ、と溜息を吐く馬超。
 しかし、その言葉は董卓としては聞き捨てならないもので……

「翠ちゃんは彩ちゃんじゃ駄目って言うの?」

 むっとした顔の董卓に馬超は慌てて答える。

「そういう意味じゃなくてだな……私としてはもうちょっとこう……段階を踏んでから……」
「そういうことなら……」

 董卓がそう返し、ふと横を見れば先ほどまでいた高順が忽然と消えている。
 慌てて視線を巡らせると、孫策達と仲良く話している姿が。

 そんな彼女に溜息を吐きつつも、董卓はこれ以上わがまま言うことは諦めた。
 彼女としても、高順の立ち位置が極めて危ういところにあることは重々承知している。
 とはいえ……ようやく想い人と結ばれた董卓としてはそういった危ない状況でも幸せであった。


 そのとき銅鑼の音が鳴り響く。
 弛緩した空気は一転。

 言われなくても体が勝手に動いた。
 3人1組で三角形を作り、それを幾つも組み合わせ蜂矢陣とする。
 先頭は高順、呂布、董卓の3人組だ。
 高順本人としては物凄く嫌であるが、いい意味で名を広める為には烏丸へ先陣を切らねばならない、と彼女なりに考えた結果だ。
 自分の組に呂布と董卓を入れたのはご愛嬌。

「旗を掲げたい者は掲げるように」

 高順はそう言い、持ってきていた竿に旗をくくりつけ、自分の腰に固定する。
 牙門旗のような巨大なものではなく、いわゆる旗指物という小型で軽いものだ。

 他の者も次々と旗を掲げていく。


 旗印に関してだが、決める際に高順は色々と悩み、曹操に相談した。
 すると彼女は家紋が無いのなら、自分が最もやる気が出るものにすればいい、と助言した。
 そして高順は決めた。
 彼女の旗印は白地に赤丸、その赤丸からは16条の赤い筋が四方八方に出ている。
 そして、赤丸には白く『高』と一字。

 日本の国旗である日章旗と同じものとされやすいが、別物であるそれは旭日昇天旗だ。

 また、同じように華雄もあれこれ悩んだ挙句、漆黒に染めた布地に白文字で『華』と孫子の一説を書いた。
 調子に乗ってやり過ぎないように、常に冷静であるように、という自戒も込めて。

 その一説とは「疾如風 徐如林 侵掠如火 不動如山」であった。



 色とりどりの旗が天高く掲げられ、高順らは砂塵を立てぬよう静かに移動し始めた。
 黄忠や厳顔といった弓の名手がいるのは勿論、賈詡、周瑜、陳宮、張勲までいるのだから奇襲隊が攻撃を掛ける前に本隊が潰走するということはまずない。
 




「何か言う?」

 道すがら、董卓は問いかけた。
 先ほどの一件は既に終わったことであり、引きずるようなことはしない。
 高順はその言葉にちらり、と後ろへと視線をやる。
 わずか42名。
 対する敵は3000以上。
 ここらで士気を上げる為にも号令の一つでも掛けたほうがいいんじゃないか……董卓の言いたいことはそれであった。

「大丈夫よ。やるべきことを為してくれればただそれでいい。そして、この場にいる者は全員それが分かっている。今更言う必要もない」

 そこで一度言葉を切り、しばしの間をおいて更に続ける。

「私としては大切な人の為に戦うとかそういったことは口に出すべきことじゃない。大切な人を守るなんて当たり前。口に出すなんて恥ずかしい」
「背中で語っちゃうの? 彩ちゃんがまたかっこ良くなっちゃう」

 どうしよう、とおろおろする董卓。
 目前まで迫った戦闘を目の前にしてこの胆力。
 高順はちょっとその度胸を分けて欲しくなった。

「あ、彩ちゃん。私は勿論、守ってくれるよね?」
「暴走する牛を素手で一撃で殴り殺すような子にはむしろ私を守って欲しい」
「だって、可哀想だったから一撃で殺したんだよ……あ、それと美味しかったよね。あの牛」

 どうにも董卓はズレているようだ。
 しかし、そこがまた可愛いともいえた。

「……そろそろ」

 呂布が小さく呟いた。
 高順と董卓がその声に視線を前に向ければ、ケシ粒のような小さな黒い点がポツポツと遠くに見える。
 もし敵が囮と見破っていれば斥候なりを出して全周警戒を行なっている筈だが、斥候発見の報も無い為に完全に信じ込んでいるらしい。

 歩いている為に速度は遅いが、それでも見る見るうちにその黒い点は大きくなっていく。


 目測でおよそ2町(約220m)まで迫ったとき、高順は手を高く掲げ、そして振り下ろした。
 それを見、喇叭を持った騎兵が高らかにその音を響かせる。
 鳴り響く突撃喇叭の音。

 勇ましいその音に高順らはただちに馬を加速させ始める。
 風を得、靡く旗。

 高順は僅かに視線を後ろへ向ける。
 落伍者は当然ながらいない。
 陣は乱れず、まるで糸で繋がっているかのように。
 孫策、孫権、甘寧の3人もしっかりとついてきている。

 前へと再び視線を向ければ敵兵はもはや目前。
 各々の顔までもはっきりと視認できる。
 パッと見た限りでは男はおらず、金髪碧眼で白い肌の見目麗しい少女達だ。
 彼女らは口々に何かを叫んでいる。

 すかさずに高順は馬の腹にくくり付けてあった短弓を手に持ち、同じく矢筒から流れるような動作で矢を一本、取り出す。
 弦につがえ、引き絞る。
 ちらりと左右を見れば呂布や董卓もまたその特別製の長弓に矢をつがえ、弦を引いているのが見えた。
 あんな矢を食らう敵の少女達にもったいない、と口の中で呟きつつ、高順は視線を前へと戻す。
 ぎりぎりまで引き絞り、狙いを定め、今まさに放とうとした瞬間――


「……え?」

 敵兵達は皆馬から降りて武器を手放してしまった。
 これに呆気に取られたのは高順だけでなく、呂布や董卓も何やら様子がおかしいと弓を下ろす。
 それを見た後続も次々に弓を下ろしていく。

 やがて高順達は敵兵と目と鼻の先までやってきた。
 どうしようか、と高順が思ったそのとき、敵兵達の中から1人の少女が現れた。
 金髪を肩口あたりで切りそろえ、その碧眼はまっすぐに高順を見据えている。

「私は李穎と申します。あなたは高順殿で相違ありませんか?」

 問いに高順は頷く。

「我々は降伏します」

 高順は再び呆気に取られつつも、何とか承諾の返事を返した。










 そして、時間は高順らが突撃を開始する直前に遡る。
 後方に正体不明の騎兵を発見したことが李穎に伝えられた。
 数が少数ということから、功を焦った漢族が後方から回りこんできたという程度にしか思わなかった。
 単騎駆けや少数部隊による攻撃というのは漢族も烏丸もよくやっている。
 それでもって自身の武を示し、また栄誉を得ることが――早い話が英雄になることができる。

 こちらの方が数で上回っていることもあり、目一杯近づいてきたら矢をお見舞いすればいい、とそう李穎は指示を下した。
 それよりも問題は目の前の馬車の群れであった。
 彼女は勿論、部下達も皆、その馬車は輜重隊であり、漢族のどこかの軍に補給を行う為にやってきたが道を誤ってこんなところにまでやってきたのだ、とそう考えていた。
 しかし、いざやってきてみれば大盾をずらりと構えた見慣れぬ軍装の兵士達。
 翻る旗は鮮やかな青の『賈』を筆頭に『陳』『黄』『厳』『周』と将の存在を露わにしていた。
 どの旗も伝え聞く漢族の勇者達のものではないが、それでも強制徴兵した士気も練度も低い漢族の兵隊が戦って勝てる相手ではない。

 ましてや、主力となるだろう突騎はわずか500。
 もし、徴兵した漢族がこちらに被害構わずに攻撃を仕掛けてきたら防ぎ切れない。
 持てる矢は有限であり、撃ち尽くしたら一旦後方へ下がり、矢を自作するか、輜重隊から補給してもらわねばならない。


「……攻撃すべきか、それとも引くべきか」

 そう彼女は呟いた。
 それを聞いた部下達は攻撃すべき、と皆告げた。
 自分達は強いと確信しているからこその言葉。
 だが、李穎としてはそれは慢心であると思えた。

 烏丸の中で李穎はどうにも浮いている存在だった。
 ただ力任せに攻めるだけの戦にもっと楽に、もっと効率的に……そういうことを思ったのだ。
 それ以来、彼女は孫子をはじめとした各種兵法書やその他必要と思われる書物を読みあさり、自分なりに考え、部隊を運用しようとしたが、部下達がついてこなかった。
 李穎は武芸にも力を入れていたが、どうしても武芸にだけ力を入れている者とは差が出てしまう。
 よく開かれる烏丸の武術競技会では彼女はいつも最下位であった。
 羌族もそうだが、五胡というのは腕っ節が強い者を尊敬し、弱い者を軽蔑する風潮が強い。
 ともあれ、そんな彼女でも今回は上司に比較的恵まれ、李穎が出した意見書がそっくりそのまま採用された。
 
 それは涿郡の兵力を敢えて薄くし、敵軍を誘い込んだところで集中攻撃を掛けて消耗させるというやり方だ。
 この策は成功を収め、これまで攻め寄せた連合軍を全て撃退している。
 とはいえ、比較的恵まれたという意味の通り、彼女の上司は全部それを自分の手柄としてしまった為に最大の功労者の李穎は一警戒部隊の長に落ち着いていた。


 閑話休題――

「攻撃しよう。ただし、漢族の連中が反乱を起こしても困る。故に……」

 そこまで言ったとき、高らかに喇叭の音が鳴り響いた。
 聞いたことのない音に周囲の部下は勿論、李穎も困惑。
 しかし、後方から聞こえてきた悲鳴じみた叫びは一瞬で李穎の、否、全ての烏丸兵の士気を喪失させるに足るものであった。

「後方の騎兵が増速、先頭は銀髪の羌人! 旗印は白に赤丸の高! 高順です! その後方に漆黒の華旗を確認! 華雄もいます!」

 李穎含め、全員が凍りついた。
 高順と華雄については烏丸でも知らぬ者はいない。
 20万を2万で破った英雄として讃えられている。

 そんなとんでもない連中が――


 そう思ったとき、更に彼女達を絶望に叩きこむ報告が舞い込んできた。

「馬旗を確認! 馬騰です! 馬騰がいます!」

 高順と華雄と馬騰が隊伍を組んで攻めてくる。
 少数とはいえ、大陸で最強ともいえるこの布陣に李穎はすぐさま決断した。

「降伏する。異論ある者はないな?」

 問いかける李穎に部下達は頷いた。
 時に無謀ともいえる程、勇敢な彼女らであっても、さすがに高順らの相手はしたくない。
 何よりもこの時代、異民族に限らず、漢族も腕っ節が強い輩を尊敬し、またそれに服従することを良しとしていた。
 早い話、21世紀のようにある種の精神的に殺伐とした時代というわけでもない。
 義理や人情といったものが大事にされた時代なのだ。

 そして、そのとき伝令が転がるようにやってきた。

「徴兵した漢族がこちらに向かってきます! 先頭には赤髪の少女が!」
「急いで降伏だ!」

 こうしちゃいられない、と李穎は全員に馬から降り、武器を手放すよう指示したのだった。
 








 そして、烏丸らが降伏してから早1刻。 
 細かな指示を出し終えた高順は賈詡と共に立ちふさがる難問を解決しようとしていた。

「どうしよう?」

 しかし、当の高順は困ったときの賈詡先生とばかりに傍にいる賈詡に問いかけた。
 その問いは3つの難問による。
 1つは降伏した烏丸の扱い。
 もう1つは賈詡が煽動したが故に勇気を振り絞って烏丸に反抗した強制徴兵された住民達。
 高順らが突撃を開始する以前の、対峙してすぐの頃から賈詡は住民らへの工作を仕掛けていたのだ。
 最後の1つは孫策ら御目付役にどう言い訳して烏丸を頂くか。

 ともあれ、1つ目に関しては住民達は即時処刑を望んでいるという報告がきている。
 そして、その住民達には食事が振舞われている。
 事情を聞けばやはりというか強制徴兵され、無理矢理戦場に駆り出されていたらしい。

 また村や街の食糧事情は著しく悪く、食糧や金品、そして男の多くは烏丸が持って行ってしまったとのこと。
 男に関しては烏丸も羌と同じく、女系民族であるのでそれも当然のことだった。
 そして、対する烏丸側は高順に従いたいと言ってきている。

「ウチとしては烏丸は欲しいわ。匈奴はまるっきり音沙汰無しだし」

 賈詡の言葉に高順は頷く。
 匈奴が味方になる、と賈詡から聞かされたときは喜んだが、待てど暮らせど匈奴はやってこなかった。

「でも、そうすると住民達はどうするか、という二律背反よ」
「彼らの怒りも相当なものだから、殺さないと怒りが収まらないでしょうね」
「烏丸側はこちらに従うことは拒否してないの?」
「してないわ。あの高順や華雄と共に戦えるなら、とか何とか……英雄してるじゃない?」

 茶化す賈詡に高順は気恥ずかしくなり、顔を俯かせてしまう。

「そうね……彼らの怒りを収めればそれでいいと考えれば……」

 そして、賈詡は高順を放って知恵を巡らせ、やがてあることを思いついた。

「ねえ、彩。良い案があるんだけど?」
「何?」
「まず責任を明確にして、部隊長の李穎だけを処罰する方向へ持っていくわ。その処罰内容は住民達の前で全裸に剥くとかどう?」

 残酷だった。
 社会的な死刑と相違はない。

「それぐらいがいいのかしらね。墨刑か杖刑でもいいと思うけど」
「最低でも烙印刑よ。でも、それでも納得しそうにないから全裸に剥かせて、性器を晒させるくらいはしないと」

 何か残酷さが増していた。
 このままだと李穎が使い物にならなくなる、と思った高順は助け舟を出す。

「処罰内容に関しては一旦置いておいて、住民達はこの後どうする? 烏丸を得るなら孫策らへの言い訳は?」
「住民達は近くの村や街にウチが辿り着いた段階で食糧持たせて解散という形にするわ。孫策達へは簡単よ。こんな兵力じゃ、後続部隊が来るまで持ちこたえられませんといえば承諾せざるを得ないわ」

 ぽんぽんと答えが出てくる賈詡にさすがだ、と感心しつつ高順は更に告げる。

「件の勇気を振り絞った最初の少女を呼んで欲しい。とりあえず彼女の意見も処罰に反映しよう」

 いざとなったらその少女を処罰減免の為の説得に使う為ということを賈詡は悟った。
 また同時にあることも考えついてしまい、まさかと思いつつも、賈詡は問いかける。

「あんた、最近やってないから、恩を売って烏丸の連中と一晩しっぽりしたいとか何とか思ってるんじゃないでしょうね?」

 ジト目の賈詡に高順はああ、その手があったか、と思わず手を打った。
 その様にどうやら本当に考えてなかったらしい、と賈詡はあたりをつける。

「でもね、詠。私としてもほら、烏丸と同じでこうね、征服欲とかそういうのがあってね」
「つまり?」
「嫌がる連中を無理矢理組み伏せたい。泣き叫ぶ声が聞きたい」
「戦闘が不完全に終わったから気が昂ってるのね」

 高順と同じように華雄も元気一杯であったりする。
 そんな彼女は呂布や董卓などの目に付く相手に勝負を仕掛け、勢い良く宙を舞っている。

「まあ、それについては置いておいて……とりあえず件の少女を呼ぶわ」


 そんなわけでただちに件の少女が呼び出された。
 呼び出しを受けた彼女はガチガチに緊張しながら、高順と賈詡の前にやってきた。

「公孫伯珪と申します」

 そう名乗った赤髪を一纏めにした彼女に高順はただちに告げた。

「あなた、今日からウチの将として働いてみない? 月に3000出すわ」

 その言葉に少女――公孫瓚は呆気に取られ、ついで驚きの声を上げた。

「あ、えと、私はその……と、特に何も取り柄が無いですけど……」

 自分で言って傷ついたのか、思わず項垂れてしまう公孫瓚。
 そんな彼女に高順は脱兎の勢いで駆けより、その手を握り締める。

「大丈夫、あなたは大成する。私が保障する。だから、私に仕えて欲しい」

 真剣な表情の高順に公孫瓚は嘘などではないことが容易に分かった。
 
 公孫瓚は常々劣等感を持っていた。
 何をやってもできるのだが、どうにも器用貧乏であることが否めない。
 師であった盧植はそんな彼女の悩みに対して、いつかきっとあなたを必要としてくれる人がいる、と励ましていた。
 それが今、このときだと公孫瓚は確信する。

「……わかりました。この公孫瓚、微力ですが粉骨砕身お手伝い致します」

 そう言う公孫瓚に高順は嬉しそうに笑みをこぼしつつ、告げる。

「改めて、私は高順よ。真名は彩」

 言葉に公孫瓚は目を丸くした。

「よろしいのですか?」

 問いかけは真名に対するもの。
 任官したばかりの自分にいきなり許すとは考えられない。

「いいのよ。私はそれだけあなたに期待しているわ。あ、勿論、頑張りすぎないように。過度な仕事は失敗のもとよ」
「高順様……」

 公孫瓚は感動の余り体を震わせてしまう。

「あなたは?」
「わ、私は白蓮です!」
「そう、良い名ね」

 そう言いつつ、高順は公孫瓚の頬を優しく撫でる。
 
「盛り上がってるとこ悪いけど、進めていいかしら?」

 賈詡が若干お怒り気味に問いかけた。
 不機嫌な表情はもはや演技などではなく、本気のそれだ。
 高順はこれはまずい、とすかさず告げる。

「賈詡、説明を」
「……わかったわ」

 後で覚えてなさいよ、とそんな視線を高順に向けながら、賈詡は公孫瓚に事情を説明した。
 すると公孫瓚は打てば響くようにすぐに答えた。


「烏丸を取り込むべきです。幽州では同化政策の為に漢族と烏丸の軋轢が絶えません。逆に言えば烏丸とのイザコザには慣れているとも言えます。確かに今回の一件は今まで以上に被害甚大であり、民も怨嗟の声をあげています。ですが、やはり精強な烏丸をただ潰すにはあまりにも惜しいです」

 なるほど、と高順と賈詡は頷く。
 それを見、公孫瓚は更に続けた。

「民衆を納得させる為には文和殿が仰られたように、全裸に剥くなどの刑罰も良いかと存じますが、恨みを逸らし、安心感を与えればそこまでせずとも良いかと」
「安心感?」

 賈詡の問いに公孫瓚は頷き、続ける。

「高順様が一騎打ちで烏丸の部隊長を打ち倒すのです。失礼ですが、高順様はここ幽州であっても、漢族にとっては非常に評判がよろしくありません。ですので、高順様が自分は漢族の味方であると明確に示す為にはそれが一番良いかと存じます」
「そうすれば実績がある高順が烏丸と戦うという安心感を民衆は得、その高順に恐怖した烏丸が従ってもおかしくはない……中々やるじゃない」

 賈詡が笑みを浮かべ、公孫瓚を褒めた。
 任官してすぐに褒められるというまさかの事態に公孫瓚はただ恐縮するのみ。

「その案でいきましょう」

 高順は躊躇いなくそう告げた。
 一騎打ちに関しては彼女は自信がある。
 幾ら精強な烏丸といえど、呂布や董卓、馬騰や馬超よりも強いわけがないのである。
 どこから刃や矢が飛んでくるか分からない乱戦よりも一騎打ちの方が楽なのだ。
 
 とはいえ、公孫瓚は高順側の事情を知るわけもなく、自信満々な高順の様子に畏敬の念を抱いてしまうのであった。

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